M.P.L.A/TAPPER ZUKIE(12inch)

M.P.L.A/TAPPER ZUKIE(LP)

ジャマイカ・レゲエ/ダブのプロデューサー、DJの2ndアルバム。
とてもポリティカルな音源であるのはアルバムタイトルが示している。ニューヨークパンクのPatti Smithがこのアルバム(前年にシングル・M.P.L.Aをリリースしているが、それか?)に感銘を受け、ZUKIEが彼女のイギリスツアーのサポートを果たしたというエピソードを持つ。彼女に限らず、70年代のパンクシーンはジャマイカの音楽シーンとも密接な関係があり、Sex Pistols解散後にボーカルのJohnはジャマイカに滞在し、ニューウェーブバンドPILを結成、ダブを大胆に取り入れた1stアルバムをリリースしたり、The Clashはアルバム"Sandinista!"でレゲエ/ダブを取り入れたアルバムをリリースしているが、左翼政治運動組織名をアルバムタイトルにしたのはこの音源がヒントだと僕は思っている。
一言でレゲエと言っても、パンクやハードコアと同じく、様々なジャンルに分かれるのだが、この音源はルーツレゲエ系と呼ばれるもので、僕個人はルーツ&ダブしか興味が持てなかった。それもそんなに深く掘り下げて聴いていたわけではない。この音源もある左翼思想を持つ人物に教えられた。レゲエを聴かない人でもボブ・マーレーは知っていると思うが、彼の音楽がとてもポリティカル&シニカルだということも教えられた。
この音源はアンゴラ解放人民労働党(M.P.L.A)をタイトルにしているが、アフリカ・アンゴラでM.P.L.Aが独立を勝ち取った年にアルバムタイトル曲をシングルでリリースしている。残念ながら、その後内戦へ突入していくのだが、ルーツレゲエの緩く乾いた軽快なリズムとは真逆の悲しさや悲劇が感じ取れる。ルーツレゲエからポリティカルな面を感じるのは難しいし、優しく語り掛けるような温かみのある母性的なサウンドや歌詞には攻撃的な怒りの要素は全く感じない。黒人民族主義の指導者でもあったマーカス・ガーベイを歌った曲もあり、黒人が辿ってきた悲しい歴史が背景にあるのを知る事も必要だと思う。純粋に音楽としても楽しめるが、音楽とはそういう一面もあるという事は知っていても損はしない。
CD盤も出ているが、あのジャケットは酷い。版権の問題?という訳で買うならアナログ盤で。
released by Klik Records(UK) in 1976